看護師の仕事はAIに奪われる?今後の看護師業務に必要なことを解説
- 監修者:ラシク 医療転職コンサルタント
近年では、AI(人工知能)の技術進歩が著しく、ChatGPTなど高度な機能を持つAIツールが次々と登場してきています。
AIはさまざまな業界や職種の仕事を代替していくとも言われているため、現在看護師として働いている方のなかにも、「AIの進歩によって看護師の仕事が奪われるのではないか?」といった心配をしている方もいるのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、AIの登場による看護師業務への影響や今後の看護師業務において重要となるポイントについて、AIの基本的な情報とともに解説していきます。
そもそもAIとは何か?
はじめに、AIの概要やAIにできること、代表的なAIツールについて解説します。
AIの概要
AIとは「Artificial Intelligence」の略であり、日本語に訳すと「人工知能」のことです。
さまざまな情報をインプットし、まるで人間のように質問に答えたり情報をまとめたりできるコンピューターを指します。
AI自体は1950年代から研究されてきましたが、技術進歩によって近年では急速に注目が集まっています。まだまだ検証段階の部分はあるものの、翻訳ツールやチャットボット、お掃除ロボット、車の自動運転といったさまざまな分野で活用が始まっています。
AIにできること
AIにできることとしては、おもに以下のようなことが挙げられます。
- テキストや音声、画像、動画などの内容を認識する
- 過去の売上データや気象データなどを基に、今後の売上などを予測する
- これまでのデータを基に、最適な行動パターンを導き出す
- 新たにテキストや画像、動画などを生成する
上記のような特徴を活かすことで、人間が行う業務の一部を代行することができるようになっています。
たとえば医療分野においても、過去の診断データなどをAIにインプットして分析することで、患者の症状の早期診断に役立てることができるでしょう。
代表的なAIツール
近年ではさまざまなAIツールが登場していますが、なかでも代表的なのが「ChatGPT」です。
ChatGPTは、米国の研究機関であるOpen AIが2022年に開発した対話型のAIチャットボットであり、まるで人間と会話するかのように質問や相談を行うことができます。
一例として、ChatGPTに「看護師の仕事内容について教えてください」と聞いてみたところ、以下のような回答が返ってきました。
<回答>
看護師の仕事は、患者の健康管理や医療のサポートを提供することに焦点を当てています。以下は、看護師の主な仕事についての一般的な情報です(以降省略)
<実際の画>
上記の回答では、患者のケアや緊急対応、記録の管理といった業務内容が箇条書きで記載されています。
そして最後にコミュニケーションの重要性などにも触れられており、看護師の仕事について一般的かつ適切な回答がされていることがわかるでしょう。
AIの進化によって看護師の仕事は奪われてしまうのか?
それでは、AIの進化によって看護師の仕事は奪われてしまうのか?という点についてですが、結論から言えば看護師の仕事が完全に奪われることはないと考えられます。その理由は、主に以下の3点です。
- AIには人間のような感情がない
- AIでも間違うことはある
- 看護師は人手不足が課題となっている職業である
上記の点について、それぞれ解説していきます。
AIには人間のような感情がない
AIが看護師の仕事を完全に奪うことがないと考えられる理由のひとつは、AIには人間のような感情がないためです。
看護師は、患者の身体だけでなく心理面のケアも大切な仕事ですが、患者の気持ちに配慮したコミュニケーションはAIでは代替できません。
たとえば、容態が悪化して落ち込んでいる患者がいるとします。
看護師であれば「○○さん、必ず良くなりますから一緒に頑張りましょう!」というように励ますことができますが、AIの場合は「この傾向でいくと1年後に亡くなる確率は30%です」のように無機質な回答をしてしまうおそれがあります。
患者の立場からしても、日頃から目と目を合わせてコミュニケーションを取れる看護師の存在は大きく、AIに診療ケアをしてもらいたいと考える人は少ないでしょう。
AIでも間違うことはある
AIは、膨大な情報を解析して高精度な回答や判断を行うことに優れていますが、AIであっても100%正しい回答や判断を行うことはできません。
AIは、事前にインプットしたデータを基に、確率的に最も正しいと推測される回答を出力する仕組みであるため、場合によっては間違うケースも出てきます。
また、これまでの傾向にない事象が生じた場合は、正確な予測や回答を行うことができないため、臨機応変な対応が求められる医療現場においては完全に導入することが難しいのが現状であるといえます。
看護師は人手不足が課題となっている職業である
そもそも看護師は人手不足が課題となっている職業であるため、AIを導入したとしても看護師の手が完全に空くことは考えにくいでしょう。
むしろ、AIを導入したことで定型的な業務を省力化・自動化でき、患者ケアなどのコミュニケーション業務に注力できることを考えるとメリットであると捉えることもできます。
もともと人が余っている業界であればAIに代替されるリスクもそれなりに高くなりますが、需要に対して供給が少ない看護師の仕事が消滅するリスクは低いといえるでしょう。
看護師とAIは敵対関係ではなく協力関係
先ほども触れたように、人手不足が課題となっている看護師業界では、AIは仕事を奪う脅威ではなく、仕事を助けてくれるサポーターです。
そのため、看護師とAIは敵対関係ではなく、協力関係を築いていくことが重要になります。
AIをうまく活用するためには、AIについて知ることが大切です。
日頃の業務が忙しくなかなか十分な時間を取ることは難しいかもしれませんが、休日などの時間を使って最新のAI動向やAIツールについて調べてみるとよいでしょう。
調べていくうちに、現在の職場で活用できそうなAIの機能やツールが見つかる可能性もあります。
定型的な事務作業で多くの時間を費やしている場合などは、AIの導入によって解決の糸口となることもあるでしょう。
今後の看護師業務において重要となるポイント
ここでは、今後の看護師業務において重要となるポイントについて、以下の点を解説します。
- コミュニケーションスキルを高める
- さまざまな職場を経験する
コミュニケーションスキルを高める
今後の看護師業務においては、これまで以上にコミュニケーションスキルが重要になるでしょう。
AIは、膨大な情報量の処理やデータ解析、将来予測などの分野では人間よりも高いパフォーマンスを発揮しますが、人間の感情の変化を捉えたきめ細やかなコミュニケーションなどには不向きです。
そのため、AIには真似できない看護師ならではの強みがコミュニケーションであり、患者の表情や言葉などから気持ちをくみ取ってケアを行う重要性はますます高まっていくでしょう。
さまざまな職場を経験する
さまざまな職場を経験することも、今後の看護師業務において重要なポイントです。
先ほどのコミュニケーションにも通じますが、患者の気持ちを正しく察知して適切な診療ケアを行ううえでは、自分自身の業務経験がベースとなります。
どんなに親切心を持っていても、残念ながら経験がなければ正しい判断や対処はできません。
患者に対して適切な医療ケアを行うためには、あなた自身が十分な知識や経験を獲得していくことが必要であり、そのためにはひとつの職場だけでなくさまざま医療現場を経験していくことが重要です。
看護師としての幅を広げるためには転職も有効な手段
現在看護師として働いている方のなかには、「今の職場である程度経験を積めたので、違う職場も経験してみたい」「今の職場に満足していない」という方も多いのではないでしょうか。
大病院など職場によってはさまざまなポジションをローテーションで経験できる場合もありますが、なかなか職場異動だけでは望むキャリア形成が難しいケースもあります。
看護師としての幅を広げるためには、異なる職場への転職も有効な手段です。同じ看護師であれば、職場が違ってもこれまでの経験やスキルを十分に活用できるため、他の仕事と比べて転職のハードルは低いといえます。
あなた自身の業務の幅や経験値を広げていくうえでは、希望するキャリアビジョンを描きつつ、キャリアビジョンに沿った新しい職場を見つけていくことも効果的な選択肢となるでしょう。
まとめ:AIをうまく活用しながら看護師としての価値提供をしていきましょう
本コラムでは、AIの登場による看護師業務への影響や今後の看護師業務において重要となるポイントについて、AIの基本的な情報とともに解説しました。
近年ではChatGPTなどAI技術の進歩が著しく、AIがさまざまな業界や職種の仕事を奪っていくという見方もあります。
しかし、看護師の仕事が完全にAIに代替されることはないといえるでしょう。
なぜなら、患者のささいな様子の変化を直接的に捉えながらコミュニケーションを取れるのは看護師の大きな強みであり、AIでは代替できないためです。
また、慢性的な人手不足が課題となっている看護師の場合は、AIは仕事を奪う存在ではなく、仕事を分担していく仲間であると考えることもできます。
定型的な事務作業などにAIを活用することで、患者ケアなどの業務に注力できるようになるでしょう。
AIと協業していく未来のなかでは、今後は看護師としてさらなるコミュニケーションスキルの向上や幅広い業務経験が重要となっていきます。
そして看護師としての幅を広げるためには、転職も視野に入れながらさまざまな職場を経験していくことが有効な手段となるでしょう。