転職の決断
看護師のキャリアプラン:実現方法と考え方のポイント
- 監修者:ラシク 医療転職コンサルタント
もくじ
はじめに
看護師という職業は、人々の健康と生命を支える重要な役割を担っています。近年、医療の高度化や患者ニーズの多様化に伴い、看護師のキャリアパスも多様化しています。
同時に、看護師の多くが女性であることから、出産や育児などのライフイベントとの両立が大きな課題となっています。
本記事では、看護師が自身の理想とするキャリアプランを実現するための方法や考え方のポイントを解説します。
看護師のキャリアプランの現状と課題
1.出産後の離職率の高さ
看護師の場合、一般的な女性の就業状況以上に、出産後の離職率が高い傾向にあります。夜勤や不規則な勤務時間が育児と両立しにくいことが主な要因です。
また、急な呼び出しや残業も少なくないため、安定した育児環境を確保することが難しい状況にあります。
2.管理職への道のりの困難さ
看護部門における管理職(看護師長、副看護部長、看護部長など)に占める女性の割合は増加傾向にありますが、依然として課題が残っています。
特に、出産や育児でキャリアが中断することで、管理職への昇進に遅れが生じる場合があります。
管理職に就くためには、臨床経験だけでなく、リーダーシップスキルやマネジメント能力の習得が必要です。
しかし、育児中の看護師にとって、これらのスキルを磨く機会を得ることは容易ではありません。
3.看護師の働き方改革
近年、看護師の働き方改革が進められており、仕事と家庭の両立を支援する取り組みが増えています。
具体的には、以下のような施策が実施されています。
- ・夜勤負担の軽減
- ・柔軟な勤務体制の導入
- ・院内保育所の設置
- ・復職支援プログラム
- ・キャリア支援制度
これらの取り組みにより、看護師のワークライフバランスは徐々に改善されつつあります。
キャリアプランを立てる際に重要となる考え方
看護師としてのキャリアプランを考える際は、以下の点を重視することが大切です。
- 1. 自己の価値観や目標の明確化自分が看護師としてどのような役割を果たしたいのか、どのような看護を提供したいのかを明確にすることが重要です。
- 2. 看護の専門性を活かしたキャリアの方向性の検討急性期や慢性期、在宅医療、精神看護、小児看護など、様々な分野があります。また、臨床だけでなく、教育、研究、管理など、活躍の場も多様です。
- 3. ワークライフバランスの考慮結婚、出産、育児などのライフイベントを見据えて、長期的な視点でキャリアプランを立てる必要があります。
- 4. 継続的な学習と成長の意識医療技術や知識は日々進歩しています。研修への参加、専門資格の取得、学会発表など、自己研鑽の機会を積極的に設けることが重要です。
- 5. 柔軟性と適応力の重視医療を取り巻く環境は常に変化しています。一度立てたキャリアプランに固執せず、状況に応じて柔軟に修正していく姿勢が重要です。
出産や育児と両立しながらキャリアを形成する方法
1.多様な勤務形態の活用
多くの医療機関では、育児中の看護師のニーズに応えるため、様々な勤務形態を用意しています。
- ・時短勤務
- ・日勤のみの勤務
- ・夜勤専従勤務
- ・パートタイム勤務
これらの勤務形態を上手く組み合わせることで、自身のライフスタイルに合った働き方を実現できます。
2.院内保育所の利用
多くの病院では、職員のための院内保育所を設置しています。院内保育所には以下のようなメリットがあります。
- ・職場に近いため、緊急時にすぐに対応できる
- ・病院の勤務時間に合わせた開所時間設定
- ・病児保育に対応している場合もある
- ・同僚の子どもたちと一緒に過ごせる
3.キャリアブランクへの対策
出産や育児でいったん仕事を離れると、最新の医療技術や知識から遅れをとってしまう可能性があります。
これに対処するため、以下のような方法があります。
- ・産休・育休中の情報収集
- ・復職支援プログラムへの参加
- ・eラーニングなどを活用した自己学習
4.家族のサポート体制の構築
仕事と育児の両立には、家族の協力が不可欠です。特にパートナーとの協力体制を築くことが重要です。
- ・家事・育児の分担
- ・コミュニケーションの重視
- ・緊急時のバックアップ体制
- ・互いのキャリアの尊重
看護師のキャリアアップの選択肢
1.専門看護師・認定看護師への道
特定の分野で高度な看護実践能力を持つ専門看護師(CNS)や認定看護師の資格取得を目指すことで、キャリアアップが可能です。
- 専門看護師(Certified Nurse Specialist: CNS)特定の専門分野において、卓越した看護実践能力を有する看護師のことを指します。現在、11の専門分野が認定されています。
- 認定看護師特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる看護師のことを指します。現在、21の認定分野があります。
これらの資格を取得することで、より専門的な立場から患者ケアに携わることができ、同時に給与面でも優遇されることが多いです。
2.管理職を目指す
看護師長や副看護部長、看護部長などの管理職を目指すことで、リーダーシップを発揮し、より大きな影響力を持つことができます。
- 看護師長病棟やユニットの看護管理の責任者
- 副看護部長看護部長を補佐し、複数の部署や特定の領域の管理を行う
- 看護部長病院全体の看護部門のトップ
管理職を目指す場合、臨床経験に加えて、リーダーシップスキルやマネジメント能力の向上が必要です。
3.教育者としての道
看護学校の教員や実習指導者として、次世代の看護師の育成に携わるキャリアパスもあります。
- 看護学校教員看護専門学校や大学の看護学部で、将来の看護師を育成する
- 実習指導者臨床現場で看護学生の実習指導を行う
教育者としてのキャリアは、自身の知識やスキルを次世代に伝承する喜びがあります。
4.地域医療や在宅看護への転向
病院での勤務だけでなく、地域に根ざした看護活動にキャリアチェンジすることも選択肢の一つです。
- 訪問看護ステーション在宅療養者の自宅を訪問し、看護ケアを提供する
- 地域包括支援センター高齢者の総合相談、介護予防ケアマネジメントなどを行う
- 産業保健師企業や事業所で働く人々の健康管理や健康増進活動を行う
これらの分野では、病院勤務とは異なる柔軟な勤務形態が可能な場合が多く、ワークライフバランスを重視したい看護師にとって魅力的な選択肢となります。
まとめ
看護師のキャリアプランは、個人の価値観や目標、ライフステージに応じて柔軟に考えることが重要です。
出産や育児などのライフイベントを踏まえつつ、自身の専門性を活かせる方向性を探ることが大切です。
キャリアプランを立てる際は、以下の点を意識しましょう。
- ・自己の価値観や目標を明確にする
- ・看護の専門性を活かせる方向性を検討する
- ・ワークライフバランスを考慮する
- ・継続的な学習と成長の機会を確保する
- ・柔軟性と適応力を持つ
看護師としてのキャリアは、決して直線的なものではありません。時には回り道をすることもあるでしょう。
しかし、そのプロセス自体が貴重な経験となり、看護師としての成長につながります。
自分のペースで着実に歩みを進め、充実したキャリアを築いていってください。
最後に、キャリアプランは一度立てたら終わりではありません。定期的に見直し、必要に応じて修正を加えていくことが大切です。
社会の変化や自身の価値観の変化に応じて、柔軟にプランを調整していくことで、より充実したキャリアを実現することができるでしょう。