職場での人間関係を理由に転職するときのポイント
- 監修者:ラシク 医療転職コンサルタント
こんにちは、看護師の皆さん。今日は、私たちの仕事で避けて通れない、でも時に最も難しい問題について話したいと思います。
そう、職場での人間関係です。
看護の仕事は、患者さんのケアはもちろん、医師や他の医療スタッフとの連携が欠かせません。だからこそ、職場の人間関係がうまくいかないと、本当に辛いですよね。私自身、新人の頃は人間関係で悩み、何度も転職を考えました。
でも、その経験を通じて学んだこともたくさんあります。
看護師の職場でよくある人間関係の問題
まず、看護の現場でよく見られる人間関係の問題について、具体的に見ていきましょう。
1.世代間ギャップ
ベテラン看護師と若手看護師の考え方の違いは、しばしば摩擦を生みます。「昔はもっと厳しかった」「今の若い子は…」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
逆に、新しい知識や技術を取り入れようとする若手の意見が受け入れられないこともあります。
例えば、電子カルテの導入時に起こりがちな問題があります。若手は新しいシステムにすぐ適応しますが、ベテランの中には抵抗を感じる人も。
このような場面で、お互いの立場を理解し合えないと、チームワークに影響が出かねません。
2.チームワークの問題
看護はチームワークが命。でも、情報共有が不十分だったり、協力体制が整っていなかったりすると、患者さんへのケアに影響が出かねません。
「あの人は自分の仕事しかしない」「忙しい時に助けてくれない」といった不満はよく聞きます。
例えば、夜勤中に急変患者が出た時、チームの協力が得られずに1人で対応しなければならなかった経験はありませんか?
このような状況が続くと、モチベーションの低下や燃え尽き症候群にもつながりかねません。
3.上司との関係
厳しすぎる指導や、逆に適切な指導がない場合など、上司との関係で悩む看護師は少なくありません。
パワハラと感じるような言動に悩まされることもあるでしょう。
私の友人は、ミスをした時に上司から人格否定するような叱責を受け、精神的に追い詰められた経験があります。
逆に、新しいスキルを習得したいのに、上司からの支援がなく、キャリアの停滞を感じる看護師もいます。
4.医師との関係
チーム医療とは言っても、医師と看護師の立場の違いから生じる問題はまだまだあります。医師の指示の出し方や態度に悩む看護師も多いですね。
例えば、夜間に患者の状態が変化した時、当直医に連絡しても適切な指示がもらえず、どう対応すべきか悩んだ経験はないでしょうか。
また、医師の態度が高圧的で、質問や提案がしづらい雰囲気に悩む看護師も少なくありません。
5.患者さんやご家族との関係
直接のケアを行う私たち看護師は、時に患者さんやそのご家族からの不満のはけ口になることもあります。理不尽なクレームに悩まされることも。
認知症の患者さんへの対応で家族から理解が得られなかったり、終末期の患者さんの家族との関わりで心を痛めたりすることもあるでしょう。
これらの経験は、看護師としての成長につながる一方で、大きなストレスになることも事実です。
こういった問題に直面すると、「もう辞めたい」と思ってしまうのも無理はありません。でも、ちょっと待ってください。
転職を考える前に、まずは次のステップを踏んでみましょう。
転職を考える前にやるべきこと
1.問題を具体的に書き出す
まずは、今の職場で感じている不満や問題を、具体的に書き出してみましょう。
「人間関係が悪い」というだけでなく、「誰と」「どんな場面で」「どんなことが」起きているのか、できるだけ詳しく。
私が新人の頃、先輩看護師との関係に悩んでいた時、こんなふうに書き出しました。
- ・Aさんに質問すると,いつも嫌そうな顔をされる
- ・夜勤の時,Bさんが仕事を押し付けてくる
- ・カンファレンスで意見を言うと,Cさんにいつも否定される
こうして書き出すと、問題が具体的になり、解決の糸口が見えてくることもあります。また、自分の感情や反応パターンにも気づくかもしれません。
2.自分で解決できることを考える
書き出した問題の中で、自分で何とかできそうなことはないでしょうか。
例えば、コミュニケーションの取り方を工夫したり、自分のスキルアップを図ったりすることで、改善できる問題もあるかもしれません。
私の場合、先輩に質問する時間帯を考えたり、自分からもっと積極的に仕事を探すようにしたりしたところ、少しずつ関係が改善していきました。
具体的には以下のような取り組みを試してみました:
- ・忙しい時間を避けて質問するようにした
- ・質問する前に,自分なりに調べてから聞くようにした
- ・先輩の仕事ぶりをよく観察し,良いところを積極的に真似た
- ・自分から進んで雑務を引き受けるようにした
これらの小さな変化が、徐々に職場での自分の立ち位置を変えていきました。
3.信頼できる人に相談する
1人で抱え込まずに、信頼できる人に相談してみましょう。職場の先輩や上司、友人や家族など、客観的な意見をくれる人がいいですね。
時には、病院の相談窓口や産業医に相談するのも良い選択肢です。
私は、同期の看護師と悩みを共有し合うことで、「自分だけじゃない」と気づき、心が軽くなった経験があります。
また、メンター制度がある病院では、指定されたメンターに相談するのも効果的です。
相談する際のポイントは:
- ・感情的になりすぎず,できるだけ客観的に状況を説明する
- ・相手の意見を聞く姿勢を持つ
- ・具体的なアドバイスを求める
- ・相談した内容を整理し,行動計画を立てる
4.職場の良い点も見つめ直す
問題ばかりに目が行きがちですが、今の職場の良い点も改めて考えてみましょう。
患者さんとの関わり、学べる環境、働きやすい勤務体制など、プラスの面もきっとあるはずです。
例えば:
- ・専門性の高い治療に携われる機会がある
- ・教育システムが充実している
- ・ワークライフバランスを重視した勤務体制がある
- ・患者さんやその家族から感謝の言葉をもらえる
- ・同僚との絆が強い
これらの良い点を書き出してみると、現在の職場の価値を再認識できるかもしれません。
5.他の選択肢を探る
それでも現状を変えたいと思うなら、まずは院内での異動を考えてみるのはどうでしょうか。
別の病棟や外来など、環境を変えることで新たな可能性が開けるかもしれません。
院内異動のメリットは:
- ・病院の文化や基本的なシステムを知っているので,適応しやすい
- ・これまでの人間関係を完全に失うことなく,新しい環境に挑戦できる
- ・転職よりもスムーズに環境を変えられる
上司や人事部門に相談して、自分のキャリアプランに合った部署への異動を検討してみましょう。
それでも転職を決意したら
これらのステップを踏んでも状況が改善せず、転職を決意した場合は、次のことに気をつけましょう。
- 1.具体的な転職理由と、今後のキャリアプランを明確にする– 単に「人間関係が悪いから」ではなく「より専門性を高めたい」「ワークライフバランスを改善したい」など前向きな理由を見つける
– 5年後、10年後の自分のキャリアビジョンを描く - 2.転職先の情報をしっかり集める
(特に人間関係や職場の雰囲気)– 可能であれば、実際にそこで働いている看護師の話を聞く
– 病院の理念や教育システム、キャリアアップの機会などもチェック - 3.可能であれば、今の職場を辞める前に次の職場を決める– 経済的な不安を減らし、じっくりと次の職場を選ぶことができる
– 現在の職場での経験を最大限活かせる転職先を見つけやすい - 4.転職の意思を伝える際は、感情的にならず、冷静に対応する– 感謝の気持ちを忘れずに
– 引き継ぎをしっかりと行い、最後まで責任ある態度で仕事をする
看護師の転職市場は比較的恵まれていますが、だからこそ慎重に選ぶことが大切です。
転職エージェントを利用するのも一つの手段です。
彼らは様々な病院の情報を持っていますし、職場の雰囲気まで教えてくれることもあります。
新しい職場での人間関係づくり
転職後は、新しい環境での人間関係づくりが重要になります。
以下のポイントを意識してみてください:
- 1.積極的にコミュニケーションを取る– 自己紹介をしっかりと行い、同僚の名前を覚える
– 休憩時間などを利用して、雑談を交えながら関係性を築く - 2.謙虚な姿勢を保つ– 前職での経験を活かしつつ、新しい環境のやり方を尊重する
– 分からないことは素直に質問する - 3.チームの一員としての意識を持つ– 自分からできる仕事を見つけて行動する
– 他のスタッフのサポートを積極的に行う - 4.職場の文化や習慣を理解する– 申し送りの方法や記録の書き方など、細かいルールにも注意を払う
– 職場特有の言葉遣いや慣習があれば、早めに適応する - 5.ストレス管理を忘れずに– 新しい環境に慣れるまでは特にストレスがかかりやすいので、自己ケアを怠らない
– 趣味や運動など、オフの時間の過ごし方も大切に
最後に
職場の人間関係で悩むのは、決して恥ずかしいことではありません。
むしろ、患者さんのために良いケアを提供したいと思う、プロフェッショナルだからこそ悩むのだと思います。
でも、その悩みがあなたの心と体を蝕んでいくようであれば、環境を変えることも大切です。完璧な職場はないかもしれません。
でも、あなたが生き生きと働ける場所は、きっとあるはずです。
私たち看護師は、患者さんの人生に寄り添う素晴らしい仕事をしています。だからこそ、自分自身のケアも忘れずに。
あなたが笑顔で働けることが、きっと患者さんの笑顔にもつながるはずです。
人間関係の悩みと向き合い、乗り越えていく過程は、看護師としても、一人の人間としても、大きな成長のチャンスです。
今の経験を、きっと将来のあなたの力になると信じています。
最後に、こんな言葉を贈りたいと思います。「困難は、あなたを止めるためではなく、あなたを成長させるために存在するのです。」