看護師
看護師のキャリアアップの方向性と関連する資格を解説
- 監修者:ラシク 医療転職コンサルタント
もくじ
看護師のキャリアアップの方向性と関連資格
ひとくちに看護師と言っても、活躍する分野や職場はさまざまであり、キャリアアップの方向性も異なります。看護師のキャリアアップの方向性としては、おもに以下のパターンが挙げられます。
- スペシャリストとして特定の分野の専門性を深める
- ジェネラリストとして幅広い分野の経験を積む
- マネージャーとして管理職のポジションに就く
- 研究者として医療現場や看護業務の発展に貢献する
- 看護師の経験を活かして、一般企業などに転職する
ここでは、上記の各パターンの内容や関連する資格について解説していきます。
スペシャリストとして特定の分野の専門性を深める
キャリアアップの方向性のひとつは、スペシャリストとして特定の分野の専門性を深めるパターンです。看護師としての技術・スキルを極めたい方や、特定の分野への関心が強い方にとっておすすめのキャリアとなります。スペシャリストになることで、医療現場の最前線で大きく活躍する看護師を目指せるでしょう。
スペシャリストとして看護師のキャリアを歩む際は、以下の資格を取得することが重要です。
- 専門看護師
- 認定看護師
専門看護師
専門看護師は、水準の高い看護を効率よく行うための技術と知識を深め、卓越した看護を実践できると認められた看護師を指します。専門看護分野は以下に分かれており、分野ごとに日本看護協会が認定しています。
- がん看護
- 精神看護
- 地域看護
- 老人看護
- 小児看護
- 母性看護
- 慢性疾患看護
- 急性・重症患者看護
- 感染症看護
- 家族支援
- 在宅看護
- 遺伝看護
- 災害看護
- 放射線看護
専門看護師になるためには、以下の条件を満たすことが必要です。
- 看護系大学院の修士課程で所定の単位を取得する
- 通算5年以上の実務経験がある(その内、3年以上は専門看護分野の実務経験)
- 専門看護師認定審査に合格する
資格の有効期間は5年間であるため、5年ごとに更新が必要となります。
認定看護師
認定看護師は、高度化・専門化が進む医療現場において、水準の高い看護を実践できると認められた看護師を指します。認定看護分野は以下(2020年度より開始)に分かれており、分野ごとに日本看護協会が認定しています。
- 感染管理
- がん放射線療法看護
- がん薬物療法看護
- 緩和ケア
- クリティカルケア
- 呼吸器疾患看護
- 在宅ケア
- 手術看護
- 小児プライマリケア
- 新生児集中ケア
- 心不全看護
- 腎不全看護
- 生殖看護
- 摂食嚥下障害看護
- 糖尿病看護
- 乳がん看護
- 認知症看護
- 脳卒中看護
- 皮膚・排泄ケア
認定看護師になるためには、以下の条件を満たすことが必要です。
- 認定看護師教育機関で所定の教育を受ける
- 通算5年以上の実務経験がある(その内、3年以上は認定看護分野の実務経験)
- 認定看護師認定審査に合格する
認定看護師においても資格の有効期間は5年間であるため、5年ごとに更新となります。
ジェネラリストとして幅広い分野の経験を積む
ジェネラリストとして幅広い分野の経験を積むキャリアのパターンもあります。特定の分野だけでなくさまざまな分野を経験してみたい方や、看護師として幅広く視野を広げたい方などにおすすめできるキャリアです。
ジェネラリストとして看護師のキャリアを進める場合は、必要となる資格や研修は特にありません。ジェネラリストは、スペシャリストと比べると専門性は浅くなりますが、その代わりに幅広い知識や経験を活かして医療現場の状況に応じた臨機応変なケアを行えることなどが特徴です。
また、リーダーシップを発揮することで、医療現場のチームを統率していく立場になることも可能です。ジェネラリストとして医療現場のチームを率いていくうえでは、病院やクリニックの方針を理解していくことも大切になります。
マネージャーとして管理職のポジションに就く
医療現場での経験をある程度積んだら、マネージャーとして管理職のポジションに就くキャリアもあります。マネジメント業務に興味のある方や、病院・クリニックの経営に関心のある方におすすめできるキャリアです。
具体的な立場としては、看護部長・看護師長・看護主任といった管理者としての役職となります。以下では、看護部長・看護師長・看護主任それぞれの役割について説明します。
看護部長の役割
看護部長は、病院・クリニックの看護部門の責任者です。看護師の代表としての立場となるため、看護だけでなく病院・クリニックの経営にも携わります。また、病院・クリニック全体の経営方針に基づき、看護部の理念・目標などの設定や看護師たちへの共有も行います。
全体マネジメントがメイン業務となるため、現場で看護業務を行うことはほとんどありません。看護部全体の業務計画や人材採用計画の策定、予算編成などが主な仕事内容となります。
看護部長になるためには、高い視点を持って病院・クリニック全体の経営を考える能力などが求められます。
看護師長の役割
看護師長は、各診療科や各病棟に所属する看護師の責任者です。看護部長などの経営陣とコミュニケーションを取りながら、看護現場のリーダーとして看護師の育成や指導、医療サービスの向上などに努めます。
看護師長に関しても、実務的な看護業務を行う機会は少なく、おもな仕事内容は看護師の勤務スケジュール表の作成や看護師の配置管理、医療現場の安全管理などになります。
看護師長はリーダーシップが求められる立場であり、周囲の看護師から信頼される人が適任であるといえます。責任感を持って日々の看護業務に従事し、周囲とうまくコミュニケーションを取ることができれば、徐々に周囲から信頼される看護師になっていくことができるでしょう。
看護主任の役割
看護主任は、看護現場をまとめる実務リーダーの立場です。各診療科や各病棟の看護責任者である看護師長と連携を取りながら、看護現場の実務面での統率を行います。
マネジメントを行う立場のなかでは最も現場に近い存在であり、新人看護師や若手看護師への直接的なサポートも実施します。たとえば、新人看護師への研修の実施、看護学生の実習受け入れ・指導なども仕事の一部です。
看護主任は、新人看護師や若手看護師から頼られる機会が多く、十分な看護知識や経験を持って指導にあたることが求められます。また、看護現場の雰囲気を良くするうえで重要なポジションでもあるため、新人看護師や若手看護師と積極的にコミュニケーションを取る姿勢も大切です。
マネージャーが目指す資格は「認定看護管理者」
マネージャーとしてのキャリアを歩む場合は、日本看護協会が認定する認定看護管理者資格の取得を目指すとよいでしょう。認定看護管理者とは、看護管理者としての優れた資質を持ち、看護チームの発展に貢献できると認められた看護師を指します。
認定看護管理者になるためには、以下の条件を満たすことが必要です。
・認定看護管理者教育課程サードレベルを修了または看護管理に関連する学問領域の修士以上の学位を取得する
・通算5年以上の実務経験がある(その内、3年以上は看護師長相当以上の管理経験)
・認定看護管理者認定審査に合格する
認定看護管理者においても資格の有効期間は5年間であり、5年ごとの更新となります。
研究者として医療現場や看護業務の発展に貢献する
病院・クリニックなどの医療現場で看護業務を行うのではなく、研究者として医療現場や看護業務の発展に貢献するキャリアもあります。この場合、たとえば大学などの研究機関で看護学の研究を行うことなどが仕事となります。
医療現場や看護業務の発展のために、学問的な探求を深めていきたい方にとっておすすめのキャリアであるといえるでしょう。看護研究者としてのキャリアを進めたい場合は、大学院の修士課程修了が条件となる場合が多くなります。
また、研究者としてのキャリアを深めていくうえでは、まずは看護師として病院やクリニックでの現場経験をしっかりと積んでいくことが大切です。
看護師の経験を活かして、一般企業などに転職する
看護師の経験を活かしながら、病院やクリニックではなく一般企業などに転職するキャリアの方向性もあります。たとえば、以下のような職場が挙げられます。
・産業看護師:企業の保健室などに常駐し、従業員のカウンセリングや健康管理を担当する
・心理カウンセラー:学校や薬局に常駐し、心理的なカウンセリングを行う
・フィールドナース:医療品のデモンストレーションやアフターフォローを行う
看護経験を武器に、新たなフィールドでチャレンジしたい方におすすめのキャリアであるといえるでしょう。新たなフィールドで活躍するためには、これまでの看護師の経験に加えて転職先に合わせた知識・スキルを獲得していくことも必要です。
まとめ:看護師にはさまざまなキャリアアップの方向性がある
本コラムでは、看護師のキャリアアップの方向性やキャリアに関連する資格について解説しました。看護師のキャリアアップの方向性は、スペシャリストやジェネラリスト、マネージャー、研究者などさまざまです。また、看護師の経験を活かして、別の分野に転職するパターンもあります。
同じ看護師でも、特定の分野を極めたい方や幅広く経験を積みたい方、マネジメントに携わりたい方など、希望は一人ひとり異なるでしょう。さまざまな分野や立場で活躍できるのが看護師の魅力のひとつであるといえます。
看護師のキャリアアップの方向性や関連資格を理解したうえで、あなた自身に合ったキャリアを歩んでいきましょう。